メーデー!

旅行関係の備忘録ほか。情報の正確さは保証致しかねます。

絶景のフィヨルドとやらを見ようとフィヨルド周遊ツアーに一人参加したんですが

 

ネズミ(ここではハムスターの俗称とする)って蛙飛びするんですよ。

 

これは先日共同生活/飼育管理がスタートした修士号(ハムスターの個体名)もといショゴス(同個体名)の話なんですけれども、当該ハムスターは生後一か月前後、育ち盛りなのか餌を与えすぎているせいかは不明なんですが、少し目を離すと、育っている。二日前まではあるんだかないんだかはっきりしなかったシマが、知らんうちにくっきり背中に出て来たりしていて、大変です。かわいい。

折角なのでこの「育ち」を記録にでも残そうかと思って私、体重測定を思い立ちました。家に来てから全然日が浅いんですけど、産まれた瞬間から人の手の入っているハムスターと言われていることもあり、まぁなんとかなるだろうと思って(伏線)、取り敢えずケージからハムスターを出して、アッそうだ、体重測定の為の箱出しておくの忘れたわとか、段取り悪く視線をウロウロさせている内に、手に持っていたつもりのハムスターが、びょっと飛び出て、床に向かって十五センチぐらい、滑空してた。吃驚した。モモンガ?

滑空したハムスターはその後重力によって無事床に激突して、一ミリかそこらの鼻の穴からいっちょ前にほんのり血を滲ませながらヂヂヂヂ(クソデカボイス)ってブチギレてたんですけど、えっ今の何 滑空じゃん こいつモモンガじゃないよね? え? 人間の側が理解が追い付いていない。今の何だったの? え? 俊敏Sかよ。動きをカバーできないのは勿論、目視すら追い付かないんだけど、ウッソ、ネズミこわ……

何とかケージに戻すや否や鼻血が見る影無く消えた(あれ本当に鼻血だったのかな……)ブチギレハムスターは、今もケージの隅に身を隠しながら息をひそめています。また一匹、世に新たな観賞用ハムスターを生み出してしまったかな……お前はいつもそうだ。今回は殊に「人慣れしてる」ものを貰ってきたので、なんだかショックがでかいんですが、別に小動物に嫌われること自体は、初めてのことではない。慣れがある。

ハムスターとの信頼関係を構築できる余人と、何かハムスタ―飼育したことはあるんだけど、概ね漏れなく嫌われていく私との、飼育環境の間にある差を、未だに理解できていない。段取り悪い癖に見切り発車で行動していくところでは? と思わなくもないんですけど、その他のポイントを検討させて頂くと、餌、水、これに特別なものを仕込んでいるようにも思われないし、名前がなんだかんだ未だ確定せずなんですが、一応ネズミとか、ハムスターとか、ヒメキヌゲネズミとか、呼びかけはしている。

やっぱ、種族名で呼びかけるのが悪いんですかね? 好かれる基本は、個別名呼びなのでは? でもネズミからすると、そんなの極めてどうでもいいことと思うんですよね? だって体系だった言語システムとか、なさそうだし、そもそも使用言語とか、無さそうだし。しかしやっぱ種族名で呼びながら、いきなりケージから取り出して来る大型生物、どう考えてみても、好かれる要素がゼロ。

お前はいつもそうだ。ハムスターの反応は、お前の人生そのものだ。お前はいつも失敗ばかりだ。同日人間とのやりとりでもミスをして人の地雷を踏み抜いたようなので、いよいよもって誰もお前を愛さないという感じなんですが、今回は完結する前に、完全に停滞した紀行文をやり遂げることを通して、「お前はいろんなことに手を付けるが、ひとつだってやり遂げられない。」ここだけ挽回していこうと思います。

 

(一部の文章は旅行中にリアルタイムで書いていたものなので、ところどころそういう書きぶり)

 

いま、時刻としては15:44で、わたしはネーロイフィヨルドだったかなんだったか、とにかく世界自然遺産の、奥底みたいなところにいる。ナットシェル(後述)の真っ最中だ。旅行の最中から回顧すんなよ。テスト期間中は常に予習あるのみじゃんかっていうと、本当にその通りで、これにはもう、いくばくの有意義もなく、わたしはただ、スマホの電池を異国にていたずらに使い込んでいるわけなんですけど、とにもかくにも、フィヨルドの奥底、フロムのビジターセンターのベンチに、マジでたった一人でぽつねんと座り込みながら、ここで書き残したいことは、フィヨルド観光のハイシーズンは夏だぞ~~~~!!!!ということです。なぜわたしがいまここでひとり座り込んでいるかという理由も、ひとえにそれ。嘘です。事前にちゃんとメールを確認しなかったことと、己の英語力の貧弱さゆえです。ゴミです。

 

で、とっちらかった文章ととっちらかった状況をまとめてわたし、そう、わたしがいま何をしているかを、こう、つまびらかにしていきたいと思います。

 

渡航前】

羽振りの良かった親戚は往年、客船旅行でヨーロッパに行ったらしい。彼彼女は立ち寄ったノルウェーフィヨルドの美しさに感激した旨を、私と顔を合わせる度、しきりに語っていた。

後年故あってそっち方面に旅行する都合が出来たので、その話を思い出した私が調べてみたところなんか、フィヨルドっていっぱいあるらしいね? まぁいっか。見ればわかるやろ(鼻ホジ)

↑怖いことにこのテンションでフィヨルド行きを決める(伏線1)。

 

多分、正気じゃなかった。そういえば旅程を組んだの、学外発表*1直後だったなアレ。今この場から逃げたいという気持ちと、責務を成し遂げたことによる解放感が負の相乗効果をしていたんじゃないかと思う。

 

この時点で親戚はヨーロッパクルーズをしている時点で恐らく夏にそこに行ったのだとか、フィヨルドがどういった所なのかだとか、そういったことは一切調べていない。怖。何この無計画。キイロタマホコリカビだってもうちょっと慎重にルート作るって。

そんなキイロタマホコリカビ以下のルート策定ですが、現代のネット社会というのは恐ろしいもので、以下のウェブサイトより更なる知見を得ました。

dent-sweden.com

dent-sweden.com


なんでも、ナットシェルで鉄道チケット&バスチケット&クルーズチケットをまとめて予約すれば、ベルゲン→オスロ鉄道移動のついでにフィヨルドを見られるらしい。

なお、冬場は日没が早いので、オスロ→ベルゲンにするとこう、フィヨルドを見るどころではなく暗闇に包まれるらしい。

この時点で「冬場は日没がアホかってぐらい早い」という知識を得ている筈なんですけど、以降のプランニング段階において日没について顧みるとか意識するとかは特にしていないです。「愚」じゃん。

 

www.norwaynutshell.com

 

調べものをしている途中でナットシェルについて「日本語予約代行サイト」なるものも見つけましたが、まぁどこに頼んだところで値段は大して変わらないらしいことを確認して、私は公式サイトから自力で申し込むことにしました。

 

今思えば、ここが伏線2。

片足突っ込んじゃった棺桶みたいな分野があまりに英語で迫って来るせいで自分でも時々忘れますが、わたしは、基本的に英語が苦手。四年間を越える学生生活を通し、必要に迫られ英語を読むことへの抵抗が薄れただけで、そこまで必要に迫られていなかった受験時は、偏差値四割からのスタート。未だに、他動詞と自動詞の違いとか、あまりよくわかっていない。でもまぁ、ニュアンスさえ把握できればなんとかなるなる。あとはまぁ、必要に迫られればこう、未来の私がなんとかしてくれる☆彡

↑こいつほんと許せねぇな。

ただでさえ事前に発表が三度重なることが既に前もってわかっていたのに、どうしてせめて趣味シーンでの負担を減らそうとしなかったのか。

しかしまぁ、意図せずしてかなんかもうそこまで頭が回らないということもあって、やたらと伏線張りまくってる当時はそういう自省が全く無く、走り出したダンプカーのような勢いだけがあった。音速で申し込みを終える。

 

この時点でもまだ、ベルゲンとオスロの位置関係や、観光しに行くフィヨルドの場所、そもそもフィヨルドって何なの?ってことも、調べてないです。ウッソだろお前。

 

やがて自由意志に委ねられ過ぎた人生の夏休みが明け、自転車操業式に発表を繰り返すゼミや日常の些事、本業に身体を占められている内に「そういえばあれから、ナットシェルから来る筈と言われているチケット確定メールが来ていないな?」と思い出してから一週間を過ぎたあたりで、申し込み時点でナットシェルから送られてきた「確認メール」に記載された連絡先に宛てて、日本時刻で非常識な時間にメールを送ると、丁度向こうの始業時刻と噛み合ったらしく、十分ぐらいで返事が来た。

 

「送った筈だけど届いてない? 迷惑メールフォルダとか見た? まぁ念のためもう一回送っとくわ(意訳)(下線は筆者による強調)」

 

迷惑メールフォルダに入っていた。

 

問い合わせる前に自分で確認しろよお前(わたし)、自分の確認不足で人様の仕事を増やすな。クソか? 

 

それにしても、まぁ、折角送ってもらったので、送ってもらった方のメールを参照する。日付、間違いない。名前、間違いない。発着地、間違いない。強いて言えばメールの前文になんか、「Please note」って書いてある以下の部分がよくわかんないけど、文中に「follow hotel」とか書いてあるし、希望者向けのオプショナルサービスへのご案内やろな。希望せんかったらええやろ(伏線3)。

 

この辺りから私生活がアホか?っていう予定の詰め込まれ方を見せ始め、私は旅程について考えるのを放棄した。

旅行計画と同じく私生活のスケジュールも同一の馬鹿が組んでいるので、渡航直前に三日間連続で発表が重なる。クソか?

結果ガイドブックも大して読み込まず、ぼんやりとした不安を抱え、歯車から逃げるように渡航。気持ちとしては、高飛び。

 


【12月某日、ベルゲン滞在二日目】

前日夜にベルゲン入りして、暗闇に浮かぶフロイエン山の際、地元の若人が乗り回すスケボーが、バス停すぐ側にある立体駐車場のコンクリを擦る音の響く中、ホテルを探して右往左往した結果、SAN値がゴリゴリに削れたり、オイルサーディン的な、一尾ずつ入っているのを期待して缶詰を買ったら、意外に鯖の味噌煮系の缶詰(魚のトマト煮)が入っていて、当然箸やスプーンの手持ちなど無く、よく考えるとこの時点で一階の共用キッチンを見に行けばよかったんですけど、残SAN値がヤバくて部屋を出る気力が最早残っていなかったので、ちょうど手持ちの左手で缶をほじって食べたりしてからシャワーを浴びて、一日ぶりに横になって眠り夜を越え、ベルゲン滞在二日目は、八時起床。しかしここは高緯度ゲッテルデメルングなので九時まで朝日が昇らないし、実際に日の光らしきものをしっかり拝めるのは十時以降。

は? 

体感でいくと、冬のベルゲンの朝九時が冬の東京の朝六時、朝十時が朝六時半。さらにこれは豆知識ですが、高緯度なので太陽は基本的に南中しません。

博識な皆さんからすると、え? お前何言ってんの当たり前だろ馬鹿なのと思われるに違いないのですが、しかし実際に南中せず、何となく山際をずーっとへばりついてる太陽、見てみ? その日は一日晴れているのに、一日中朝が続いたような有様だった。そして不意に朝日が力を失ったと思ったら、途端に夕日に変わった。正午前に夕焼け手前、冬の東京でいう十五時半ぐらいの黄色の日の光が、早速山際へ沈もうとしている光景、本当にショックだった。マジ? みたいな。自分が知っている、これまで生きていた感覚が悉く裏切られる異世界体験。日が昇らないし、空は晴れないし、夜が余りに長すぎるし、クリスマスイルミネーションがある中心部は兎も角、そこから外れた駅向こうのホステルがある方面はマジで暗闇だし、グーグルマップでホテルの位置を確認した時は、さも自分大通りですよ顔をしていたホテル前の道が、実際見てみると、片側一車線街灯ナシの暗夜行路。恐ろしい土地に来てしまった。

 

ところで本筋はベルゲン滞在二日目に行ったナットシェル関係のステップの話なんですが、

ナットシェルの予約には「ネット予約」か「現地予約」の二種類があります(現時点)。

ネットで予約できるナットシェルは基本的に早朝(午前八時代発)発の便のみなんですが、現地窓口で予約するとなんだか色々時間の融通をして貰えるらしい。2018年11月時点ではWWWに体験記が掲載されていた気がしますので、各自頑張って調べて下さい。

 

今回私は「ネット予約」をしました。

ネットで予約すると、実際の行程で必要になるチケットを「現地受け取り」にするか、「郵送してもらう」か選べます。集合知によると、ヨーロッパじゃないところに郵送してもらうことにするとハチャメチャに時間かかったりするらしいので、やめた方がいいみたいです(私調べ)。

現地でチケットの受け取りをする場合は、出発時間の三十分前までに、起点駅(スタート地点)のインフォメーションセンターで申し出るともらえます。私はベルゲン駅のインフォメーションセンターで受け取りました。

ノルウェー国鉄駅は改札が無い(電車内で切符をチェックされる。無いと高額罰金が発生する)ので、ベルゲン駅の中にズンズン入って行ってプラットホームに出ると、右手にインフォメーションセンターがあります。そこで受け取りました。

ノルウェーの施設って出入り口が普通に分かりづらいのがクソ多いんですけど、インフォメーションセンターばっかりは出入口にこれ見よがしな感じで「i」って書いてあるので、すぐわかります。その中に入って、「ナットシェル」「チケット」というようなことを窓口の人の前で呻くと、相手も慣れたもので「ご予約者のお名前は何だ」とスムーズに話が進みます。

ベルゲン駅のインフォメーションセンターは、平日8:30から19:30まで空いています。休日はもっと短い。こういうような情報は、ナットシェルの手配完了メール*2に諸々の記載があるので、そこを参考にして下さい。

 

【ベルゲン滞在三日目→オスロ滞在一日目/ナットシェル当日】
《8:15》

ナットシェル当日である。

最早故郷と言っても過言ではない(過言だ)古巣こと宿を後にする。

 

citybox.no

 

今回滞在したのはシティボックスベルゲンというところなんですけど、ここ、最高でした。屋根があるし、お湯が出る。浴室には床暖房があります。リーズナブルに泊れて、鍵のかかる個室がある。本当に最高。

諸々の経費削減の為ケトルとかテレビとか電子レンジは一階の共用部のみ、冷蔵庫を使いたい人間はそこに記名して冷蔵庫に入れろという学生寮チックな仕組みなんですけど、学生寮(イギリス)と比較してマジ綺麗で清潔なので最高です。

冷蔵庫の治安は確認してないんですけど、まぁ学生寮よりはマシなんじゃないかな、多分。私は滞在した時期が12月だったのと、部屋の暖房の効きが普通に悪かったので、冷蔵庫は必要なかったです。それでも場所柄建物自体の気密性は高いので、外と比べると全然暖かく暮らせるんですが、一点問題を上げるとすると、部屋がいい感じに冷えてた。

それにしても、原因は不明なんですが何故か部屋のグレードアップが行われていたりしてマジで住みよかったですし、何より綺麗で、良い空間でした。以降の旅程でも、定期的にここに帰りたくなります。

 

それはさておき、

 

ホテルをチェックアウトして、まだ夜明けの来ない中、一路駅へ向かう。

シティボックスベルゲンからベルゲン駅までは、だいたい五分足らずの一本道なので、一度道を覚えてしまえば、スーパーマリオの1-1より楽勝です。強いて言えば、煉瓦造りの駅舎が、周囲の建築物と馴染んでしまって、入り口の木製のドアなんかが閉じてたりすると、わりと普通に駅の入り口と気付かずに、通り過ぎたりすることぐらい。

この辺りで「えっ、私このトランクゴロゴロ転がしながらフィヨルド見るの?」みたいな、自分の選択の浅はかさを思ったりしてるんですけど、道行を共にした人々も、みんなトランクゴロゴロしてましたし、ベルゲン→オスロとか、オスロ→ベルゲンで移動する民は、みんな大なり小なりトランクゴロゴロするもんなのかなと思います。トランクゴロゴロしながらでも普通に見て回りは出来ました。まぁ、多少邪魔ですが。

 

《8:30》

列車の発車時刻は43分で、まだ時間がある。この時点で一応朝食は済ませていたものの、室温でいい感じに冷えたパン(二つで15NKぐらい)と、昨日の内に購入した紅茶系ソフトドリンクのペットボトルに水道水を入れたものだけでは熱量が足りないので、駅の売店でホットドックを買う。

 

駅のキオスクみたいな所に入る。

レジ横にセルフサービスとして置かれているケチャップのメーカー名が「イドゥン」で、かつて拝読した某同人誌(ジャンルは察してくれ)のタイトルを思い出す。イドゥンのケチャップは空だった。仕方がないので、こちらも死に体のハインツのケチャップと、なんか水っぽいハインツのマスタードを掛けてから、席に戻る。

 

《8:43》

列車が動き始める。昨日集合知仕入れた事前情報によると、ここの車窓からの景色も結構乙なものらしいが、この時刻ではロクな日の出をしないので、外の景色も大して見えない。むしろ列車内の方が明るいので、アホ面でホットドックを齧る観光客の顔が見える。この辺りで車内の温度に耐えかね、かぶっていたニット帽と上着、その中に着ていたフリースを脱ぐ。マトリョーシカか?

人影が多いという程でもない車内には、アジア人が四人居た。内一人が私、私から見て、通路を挟んではす向かいに座る二人連れの女性、私から見て通路を挟んで隣に座る一人のアジア人女性。私を除くと、皆中国人であるようだった。通路を挟んで隣に座るアジア人女性とは何度か目が合ったが、話しかける理由がなかったので、話しかけなかった。そして一人沈黙を守りながら、ノルウェー国鉄(NSB)鉄道内無料Wi-Fiにアクセスを試みるも、トンネルの多さ故か、すぐにアクセスが弾かれる。諦めてぼんやりと車窓に映る自分の影と見つめ合う。

時々車窓の向こうに、微かに見えるノルウェイの森、その木々のどれもが、積もる雪の重みにしなっていた。魔界?

 

《9:56》

トンネルを抜けると雪国であった。

ベルゲンは海流の影響によりエライ高緯度な場所にありながら、雪は大して積もらずむしろ雨が降ってるんですけど、油断して(?)少し内陸にいくと、普通に雪、積もってる。北欧だ~~~~~~っ(興奮)

 

ちなみにここまでで利用しているノルウェー国鉄、車内アナウンスは基本ノルウェー語のみ。一方のノルウェー語さん、時々、アルファベット表記のスペルから、想像だにしない発音を繰り出してくる。特に相手は地名。日本語でも時々訳わかんない読みが発生するフィールドで、正しく聞き分け降りられるか、しかしスペルがVossなんだから、良くも悪くもフォスかヴォスあたりで、まぁ聞き取れるんじゃないか、だいじょうぶかこれほんとに、等と、当地に降りるまで戦々恐々としていたんですが、ヴォス(Voss)の駅はナットシェルの利用客が多いからか、ヴォスに近づく時だけは、「お前らが降りるのはここだぞ」というアナウンスを、英語で二度繰り返していた。

 

《10:05》

ヴォスの駅にも、随分と雪が積もっていた。北欧だ~~~~~っ(二回目)
駅舎内に土産物屋やトロールなんかが居たが、次のバスの集合時間が10時10分の為、外から見るだけに留めた。

www.travel.co.jp

 

事前に読んだ旅行ブログの紀行文などによると、オスロ→ベルゲンの場合はここが自由行動の場になるらしくて、というか、ヴォス、なんか旅行サイトにも掲載があるし、結構フィヨルドの入り口として栄えているらしくて、何より、戦前の姿を留める石造りのヴォス教会とやらがあるらしいんですけど、わたしは日の丸仕込み集団行動のプロなので、大人しく観光客の集団に従い、トランクを引き摺りながら、駅から工事現場の上にあまった工材で一時的に設置された感じのスケスケの橋を渡り、集合場所の駐車場へ移動。ようやく夜が明けたはいいものの、ここで粉雪が舞い始める。あ˝あ˝あ˝あ˝眼鏡!!!!眼鏡が!!!!!曇る!!!!!!!


眼鏡を庇いながら駐車場に移動すると、駐車場内には複数台バスがあったが、今にも出発しそうな感じでスタンバイをしているのは二台。フロントガラスに、トイレ停車中の夜行バスの行先表示みたいな感じで「nutshell」と書いた紙が貼ってあるので、その内の手前の一台に荷物を預けてバスに乗る。バス内が暖かく、眼鏡が曇る。

これまで同じ列車の車両に乗っていた中国人二人連れの後をなんとなくついていき、そのまま流れで彼女らの後ろの座席に座った。暫くして乗り込んできた、これまた同じ車両にいた一人参加の中国人が、少しきょろきょろしてから私を見つけると、無言で隣に乗り込んでくる。

色素薄い人間が多数派だとアジア人の顔が目立つのか、日頃見ない顔が多数派のところで、見慣れた顔の上でついつい目が留まるのかどっちなんでしょう。私も何となく彼女らと固まって歩こうとしたし、同じような意識の引力が相手側にも働いていたような気がした。程なくしてバスが発車。

 

《11:00頃 この辺から時間の記憶がアバウトになる》

ヴォスからグドヴァンゲン(Gudvangen)までバス移動。バス内がアホかってぐらいガンガンに暖房きいてて、普通に眠い。窓の外では粉雪が散っており、視界が白くけぶっていた。駅前から五分も走ると、アパート的な集合住宅や店という店が車窓から消滅。森の中にぽつぽつと家や、開けたところ(恐らく牧草畑 雪にコーティングされた牧草ロールが見えた)といった景色が続くが、どれもこれもが白い。わ~~~~っ北欧の雪~~~~~~~って、興奮はするんですけど、同時に酷く遠いところに来てしまった感がある。隣には観光客であること以外特に関わり合いもないし、第一特に知り合った訳でもない中国人がいる。

 

《11:50頃》

グドヴァンゲン着。なんかデカイ水辺の側の、パーキングエリアのようなところの、駐車場に降ろされる。粉雪はみぞれに変わっていた。眼鏡に水滴。

チケットを確認すると、ここで一時間休憩の後、13時発のフェリーに乗り込むらしい。

 

パーキングエリアの建物内は大きく二つの部分に分かれ、駐車場側の手前エリアは土産物、奥は軽食エリアになっていた。それにしてもノルウェー、この後の行程でも土産物っていうと、きみもなりきりヴァイキングみたいなヘルメットを始めとするヴァイキングモチーフのもの、イボのある鷲鼻が特徴的な顔に引き攣ったみたいな笑顔を張り付けたトロール、時々樽床教会モチーフのマグネット等々、あとは毛皮なんですけど、ベルゲンもオスロも土産物のテンションが大体同じで、面白いなと思いました。何その統一感。

いやほんと、私の目の付け所がゴミってところは存分にあるんですけど、地方色が息してない。ご当地トロールとか、探せばあるんだろうか。或いは私がその差異を見分けられてないって可能性はほんと存分にある。違いの分かるヒトになりたい。

グドヴァンゲンパーキングエリア(暫定)の土産物屋は、特にヴァイキングモチーフに気合いが入ってて、ルーン文字が刻んであるネックレスとか売ってました。どうせ高いだろうと、値段は見なかった。日本語ガイドブックもあった記憶がある。

 

奥の軽食エリアに話を移します。ところで私、結局ナットシェルの全行程で三本のホットドックを食べる(暖かくて安価、最高)んですが、グドヴァンゲンパーキングエリア(?)内軽食エリアのホットドックは、この後乗るフロム(後述)行きフェリーの店よりだいぶ高かったので、ナットシェル道中にてホットドックを食べる際は、グドヴァンゲン以外をお勧めします(個人の感想です)。

 

パーキングエリアの中で一番長い時間滞在したのは、軽食エリアとお土産エリアの狭間にある、螺旋階段のふもとの暖炉の側、ソファーの置かれた休憩スペースだった。概ね八畳ぐらいの広さのスペースには、観光客が詰め寄せていたし、私もその一人だった。
ソファの奥に置かれたテレビでは、クリスマスリースの作り方レシピを紹介していた。けれども、それをあまり長く見ていた記憶もない。パーキングエリア内にはフリーWi-Fiがあったので、もっぱらツイッターを見たりピクシブを見たりして時間を潰していた。旅情も息してない。

 

《13:00頃》

グドヴァンゲン発フロム (Flåm)行きのフェリーが出発する。後述するフロム鉄道と併せて、ナットシェルのハイライトです。

出航して暫くもしない内に船着き場は見えなくなり、あとは大自然の威容を、ひたすらに目の当たりにすることになります。

首を上に上に、仰ぎ見ても見果てぬ程の規模の岩々が、鋭い岩肌を晒しながらそそり立っている。空模様はみぞれ交じりで、フェリーの進む水面は陰鬱な灰色、時々岩肌の合間にぽつんと立っている枯れ木。強烈な威圧感を放つ、陰気な色彩の風景が、延々と続いていきます。

視界、見渡す限り、圧倒的な大きさの岩と水ばかりで、進むフェリーのエンジンの音と、同行する旅のものたちの話し声と、それ以外は、耳が痛いぐらいの静寂。無生命空間。宇宙ってこんな感じ? いや、探せば生命、雪の下とか水の下とかに息づいていると思うんですけど、一瞥して、陰鬱な光景。わたしはそういうの好きなので、凄い楽しかったです。北欧の方の絵画っていうか、例えばハマスホイの画面の陰鬱な感じが好きな人は、割と好きな光景だと思います。でも多分、景観としては、夏がハイシーズンだと思う。冬のフィヨルド、それはそれでいいんですけど、「クルーズ!」って光景じゃないもん。強いて言えばなんか、「巡礼」に近いものを感じる。巡礼もしたことないので、適当言ってるなぁコイツと流して下さい。

 

そうこうしてフェリーで運ばれている内に徐々に天気が回復してみぞれが止んだんですが、いずれにせよスキー場の気温なので、大して長い間外に出て居られる訳でもなく、迂闊に写真ばっか取ってると、手がヤバくなります。冷える。恐ろしく冷えたスマートフォンをポケットにしまいつつ、手を擦りながら船内に撤退。


人間寒いと生命維持に体力使うもので、なんかもうすさまじく疲弊する。夏の憔悴ぶりと比較するとまだ健康的な感じがしますが(個人の意見)、空腹になるまでの速度が凄いし、意外と喉が渇く。船室で三本目のホットドック購入。いくらか忘れましたけど、グドヴァンゲンよりは安価、ソーセージやパンの種類を選べてビックリした覚えがある。あとケーキとか売ってた。高いので買わなかった。

 

しかしここまで来てあまり船室に長居するのも癪なので、程なくして外に出る。甲板二階のベンチに座りながらフェリーのフリーWi-Fiで、「フィヨルド 地理」と検索。ここでようやく、フィヨルドについての知識を入れようとし始める。目の前に見えてる厳めしい絶壁が、他ならぬフィヨルドさんなんですけど。

というか、ここで私、何故か「地理的知識」に限定して仕入れようとしていて、肝心のフィヨルドの位置とか、今目の前にあるフィヨルドの名前とか、ここまでで全然わかってないです。暴挙か? 

この暴挙検索過程で、フィヨルドの地理的形成について、ようやっと復習等もしたんですけど、

 

フィヨルドは氷河によって削り取られた地形です。そのため土壌が削られ、土地がやせています。ノルウェーでは耕地面積は国土の3%以下であり、農業には向いていません。
フィヨルド:偏西風が当たる海岸に分布」<http://chiri-tabi.com/chikei/fjord.html>、「旅の情報~地理の世界から~ 」、2018年。(最終確認日 2019年3月25日)

 

ここで、産業革命以前のノルウェー、この世の地獄の一つでは……? というようなことを考える。そんなことない! ハンザ同盟とかあったし! 栄えてるところは栄えてる! しかし、ペストで人口ばっさり半減とかしてなかった……? というような思考を続けながら、眼前の絶壁とかすげぇ岩を見てると、なんだか見る方の気持ちも変わりますね。大自然の威容、土地がやせています……。

 

ちなみにフェリーの上では、これまで移動の度ゴロゴロゴロゴロ転がしていたトランクを船室内に放置して行動していました。流石にフェリーに乗り込んでまでの部外者は居らんやろという賭けに出ていた。

道中、船室に放置した私のトランクの側の座席で、中国人女性たちがasian lady teamなるものを作って盛り上がっているのを見た。いかにも渦中のお姉さんの所持品って感じで、そこにあるのは、私のトランク。ただトランクだけが、新たに生まれた人々の関係性のともしびに、暖かく照らされていた。俺も仲間にいれてくれ~~~~~~(栄誉ある孤立)

 

《15:00頃》

クルーズ終了、フロム着。ここから二時間ぐらい待ってから列車に乗って戻るんだ~~~~~というようなことを思いながら私は着々とフラグ回収への歩みを進めているが、私はまだ伏線を知らない。

フロムの船着き場は清潔で現代的な感じ、インフォメーションセンターも、既に十分整備されていたベルゲン以上に整備されてる感じなんですけど、船着き場から駅まで、300メートルもなさそう。お土産物屋二軒と、駅に隣接したインフォメーションセンター、駅の裏手にある小規模な博物館、以上。フラム終了。街? ここで二時間潰すの? でも夏場だとなんか、ここでボート漕いだり、ここを基点に登山? とか、できるみたいです。インフォメーションセンターには、日本語/中国語のフロムとレキングガイドみたいなマップが置かれていた。

ちなみにここ、フロムの近郊には、「アナと雪の女王」の氷の城のモデルになったと言われる、ボルグンスターヴ教会があると噂なんですけど、インフォメーションセンターの地図で見た感じ、だいぶ遠い。徒歩じゃ無理だろこれ。今記事にするためにGoogleで調べてみたら、車で一時間ぐらいのところにあった。

日本からはるばる飛行機で随分飛ばして来てるので、今更車で一時間なんて誤差だろ誤差と思われると思うんですけど、トランク持って、異国、私は一人、なんか曇天の外では、また粉雪が舞い始めて、段々と薄暗くなっていって、というかこの山道に、タクシー呼びつけたら来るの? おいくら万円する? え、ここ、タクシーあるのかな 今思えばインフォメーションセンターの人が車出してくれたりしないかなとかいう厚顔なことも考えられるんですけど、先進国なのであんまりそういうバグは期待していない。実際、どうだったんでしょうね。兎角私は愚かだったので保身に走り、取り敢えずフロムのこの直径300メートル以内の空間で二時間、潰して見せようじゃないかと開き直った。

そして、いずれにせよトランクゴロゴロしながら歩き回るのウザいなと思って、インフォメーションセンターの女の人にトランク預かってくんない?と頼んだら、快諾してくれました。フロムのインフォメーションセンターで、トランク、預けられます。

 

《15:30頃》

寒さに起因する空腹を抱え、土産物屋に併設されたカフェに入る。まだ乗って来たフェリーが船着き場に残っているので、フェリーに紐づけされたフリーWi-Fiを用いながら、ツイッターをチェックしつつ入店。

ここはフィヨルドの終点、ボーイズラブ漫画でいうS字結腸のエリアにいるからか、物価がバグっている。お湯が300円(20NK)の世界線。どうせ高いし、とりあえずなんでもいいからこの土地のものっぽいものを購入しようと思い、アホサイズ(手の平いっぱいぐらいの大きさ)のメレンゲ等に目移りしながら、skollebollerを購入。暫く懐で温めて、実際にこれを食べるのは三時間後とかなんですけど、なんか薬草の味がするジャムパンでした。ノルウェー領内で食べたもので一番、素直に美味しかった。

 

《15:44》

冒頭。

 

いま、時刻としては15:44で、わたしはネーロイフィヨルドだったかなんだったか、とにかく世界自然遺産の、奥底みたいなところにいる。ナットシェル真っ最中だ。旅行の最中から回顧すんなよ。テスト期間中は常に予習あるのみじゃんかっていうと、本当にその通りで、これにはもう、いくばくの有意義もなく、わたしはただいたずらに、スマホの電池を異国にて使い込んでいるわけなんですけど、とにもかくにも、フィヨルドの奥底、フロムのビジターセンターのベンチに、マジで一人で座り込みながら、ここで書き残したいことは、フィヨルド観光のハイシーズンは夏だぞ~~~~!!!!ということです。なぜわたしがいまここでひとり座り込んでいるかという理由もひとえにそれ。嘘です。事前にちゃんとメールを確認しなかったことと、己の英語力の貧弱さゆえです。

というのは、2018年11月某日、ナットシェル公式から送られてきてわたしがしばらくプロポーションのメールボックス?で寝かせていた予約完了メールには冒頭に以下の文章が記載されていました。

 

Please note: If you prefer to take the Flam Railway in the best daylight we recommend you to take an earlier departure from Flam to the station Vatnahalsen at 14.40 arriving at 15.21. There is a path you can follow to the hotel. You can then spend the time at the Vatnahalsen Hotel, buy a cup of coffee etc. before you take the next train to Myrdal Station at 17.32 arriving Myrdal station at 17.40. You follow the original departure time from Myrdal to Oslo. You use the same tickets as you have booked. Please also see: http://vatnahalsen.no/en/

 

で、これなんですけど、

序盤のpreferの辺りまで読んで「希望者に向けてやな」と飛ばした過去のわたしさんのお陰で、いまの私は、多数の観光客を詰め合わせて発進していった列車を見詰めながら、フロムのビジターセンターのベンチに一人佇んでいるし、やがてナットシェルの旅程における大きな目玉の一つであるフロム鉄道にて、「右手をご覧ください、あの教会は~~」っていう車内放送(ノルウェー語/英語)を聞きながら、右手の車窓から見える完璧な暗闇にうつる、自分の顔を見ている。窓の外、パーフェクトな闇。ようこそダークサイド。

 

というわけで、冬場フィヨルドされる方はほんと、早めのフロム鉄道に乗って、日のあるうちにフィヨルドの絶景を、見てください。

わたしはなんか、所々車内のあかりを照らす白い雪がぽっかりと途切れた瞬間、口を開くフィヨルドの闇を前に、不安を胸をかきむしられているんですが、こういうことにならないように………(たぶんこれ夏場はパーフェクトな夕焼けフィヨルドタイムなんだと思います。)

 

そして愚かにも14:50の電車を見送ったわたしのフラム(船着き場から港まで300mもなさそうだし、それ以外のエリアに迂闊がいくとたぶん間違いなく遭難する)でのスポットを以下に紹介します。

 

フロムツーリストインフォメーションセンター
毎日17:00まで営業(2018年12月時点)、トランク等荷物を無料で預かってくれる。あとクリスマスの飾りかなんか知らんけどお菓子で出来た町並みやオブジェを展示しています。かわいい。いいにおいがした。

 

インフォメーションセンターに隣接した土産物屋1(ノルウェー土産)
16:00まで営業してるらしいんですが、15:30に鍵しまってた。は?

 

インフォメーションセンターに隣接した土産物屋2(フラム土産)

水道水持ち歩きようの再生プラスチックを利用したボトルとか、他になんか石鹸とか、意識高そうなハンドメイド品を売ってる。あとクリスマスが近い為か、なんかかわいい図面のチョコレートも売ってました。

 

インフォメーションセンターに隣接していない土産物屋

特に特筆するところがないんですが、インフォメーションセンターに隣接の土産物屋1より、布系の品揃えがよかった。普通に土産物屋。

 

上述の土産物屋に隣接したカフェ

ここがお湯が300円(20ノルウェークローネ、1NK=15円で換算)のバグカフェ。店内にはいい感じに暖房が効いていて、おしゃれな感じのカフェっぽい丸テーブルの上にはひとつひとつ蝋燭が点火されていて雰囲気ばっちりなんですけど、ここは軽減税率が導入されている世界線なので、少しでも安く上げるために雪が降る中外のベンチでお湯を飲む。ここに限らず旅程は基本的にそんな感じなんですけど、喫煙所の横のベンチに座ったのもあって場末のスキー場に来たような気分になった。スキー場十年来行ってないので、もう完全にイメージの中のスキー場でしかないんですが。

ここで買ったジャムパン???みたいな、なんかよくわかんない名前の顔サイズのパン(skolleboller)、パーフェクトにおいしかったです。 これの話を他の人間にすると「あーデニッシュのことね」って言われるんですけど、デニッシュじゃないです。デニッシュ生地じゃない。是非試してみて下さい。ハーブの香りがします。

 

フロム鉄道博物館

16:00まで、入場無料でフロム鉄道の歴史についての展示を見ることができます。展示はノルウェー語/英語のみ。ジオラマや当時の駅施設の再現、映像展示など、見て楽しめる要素も多くて寒さ凌ぎに絶好のスポットでした。土産物屋も併設されています。

 

屋内施設は以上

 

夏場は水場のアクティビティとかトレッキングとか、色々あるみたいです。ちょっと足を延ばしてスターヴ教会とか、マジでオススメなんだろうな……などと……

 

《16:23》

諸々中略しますがこの辺りから冬場のフロムを歩き回って時間を潰すことに限界が生まれ始め、乗り遅れたマンが各々インフォメーションセンターにバラバラと集い始めるんですが、顔ぶれがみんなやはり、アジア系というか、おそらく中国人。なんかおしゃれなヘアスタイルの、一見して大学生の集団だったので、上海とか香港とかその辺の、南部の人じゃないかなと勝手に当たりをつけていた。

やはり「高緯度の日照」がどういうことかよくわかってない奴が、Please note: If you prefer to take the Flam Railway in the best daylight…の意味をとれなかったか、それか普通に乗り遅れるかしたんだろうなと勝手に確信する(偏見だ)。

 

《17時頃》

フロム鉄道に乗車。


この鉄道、恐らく車窓から見える雄大な景色がウリの一つっぽいし、車両自体もめちゃめちゃ気合入ってて、明治大正期の一等車両、ニスの効いた木目が美しく車内の灯りもレトロ仕様、千と千尋の神隠し豪華バージョンといった所の車両なんですが、乗り込んだのは私と西洋人のおっさんしかいないし、インフォメーションセンターあたりで一緒に固まってた乗り遅れアジア人グループ、どこいった? あとなんかオッサン一人で笑ってるし、私もまぁぶつぶつ一人でしゃべりながら、座席でジャムパン齧ってますけど、おまえどうした? というメモが、Gmailの下書きに残されていましたが、そののち無事アジア人男グループたちと合流しました。特に会話はないし、座席も離れたところに座っていますが、心としては最早合流。

 

やがて動き出したフロム鉄道は、多分スターヴ教会についてとか、この近辺の雄大な景色とかを英語/ノルウェー語で解説してくれるんですけど、車窓の向こうはパーフェクトな闇ですし、車内の灯りに照らされアホ面で外を見る見慣れた顔が良く見える。あなただ。わたしだ。

 

唯一フロム鉄道に日没後に乗ったメリットというか、単純に「日没後に乗って映えたもの」なんですが、七色にライトアップされた、トロールの氷漬けを見ることが出来ます。七色に光る氷の彫像トロールと、その奥で完全に凍った滝が、同じく七色にライトアップされていた。電車はそこで五分ばかり停車して、アジア人グループ(別に知り合いでもない)と私は、はしゃぎながら粉雪の舞う中、ちょっとした広場に出て、凍結した滝とか、屋敷しもべ妖精っぽい、トロールの彫像の写真を撮ったりしました。

後で調べてわかったことなんですが、ここが恐らくKjosfossen(ショースフォッセン)駅だったんじゃないかな……フロム鉄道的には、割と目玉の一つのようです。先入観を持たずに行きすぎ。

 

《18:00頃》

Please note:の意するところを正しく解読し、Vatnahalsenのホテルで正しく冬のナットシェルの醍醐味を満喫した勢との合流。当初私は、いや、闇の中で七色に光るトロールの氷漬け見たのは多分我々だけだし、みたいな、謎の対抗意識を持っていたんですけど、ベルゲン駅から一緒に乗り合わせていた中国人二人連れと、一人とか、その辺の、アジアンレディスグループの人たちが、雪塗れの荷物と一緒に、興奮した様子で、口々に笑い合いながら列車に入って来るのを見て、わたしなんだか、心が折れてしまった。

「正しさ」は間違いなくあちらにある。それだけが、はっきりとわかった。敗北者は座席に縮こまりながら、船を漕ぐふりをした。

 

《18:30頃》

ミュルダール(Myrdal)着、ここからオスロに向かう鉄道(ベルゲン鉄道)に乗り換える。


ここはなんかもう、ちょっとした田舎の無人駅で、駅舎はあるんですけど、日没過ぎて、売店全部締まってて、明かりだけがついてる。ここに金田一が居たら、絶対殺人事件起こってるわ……毛利小五郎でもダメだわ……っていう感じ。絶望の駅舎。

時折暗闇の向こうから、切り裂くみたいな灯りが見えて、列車かな???って思って、粉雪の吹きすさぶホームに出ていくと、貨物列車が通り過ぎていく。私の周りはいつの間にか完全に中国人(推定)観光客ばかりで、そんなアジア人ばっかだったか? この行程。と、無人駅に佇むアジア人の私は首をひねったんですけど、言われてみれば確かに、ベルゲン→フィヨルドオスロ(ベルゲン→オスロ間は普通に六時間ぐらいかかる)とかいう、よく考えると強行軍に他ならないスケジュールで行脚するのは、地球の裏側方面からここまで来てるお前らになるよなっていう、納得の顔ぶれではあった。東京→大阪間で富士山登山してるみたいな感じでしょうか。新幹線だったら四時間とか、そんな時間かかりませんけど……無理してんだ、俺達……

次なる列車を待っている途中、貨物列車が数度通り過ぎたんですけど、我々は皆誰が言い出すでもなく、皆でホームに出て行って、通り過ぎるコンテナを見送り、自分たちの載る列車ではないことを確認していた。

ミュルダールのその駅に、置き去りにされるかもしれないという可能性への恐怖が何よりも強く、トランクを引き摺りながら私の足を動かす、その力となっていた。なんてったってここ、ほぼS字結腸だし。外は森だ。森しかない。粉雪の吹きすさぶノルウェイの森。さっきまで思う存分、暗闇にぼんやりと稜線の浮かぶフィヨルドの威容をしっかり見た後ですし、もうこれ以上人の居なさそうな場所に居ることが恐ろしかった。大自然という恐怖。

日本人、すぐに「古くから我々は自然と共存してきた」とか言いますけどね、何を以て「共存」というかとか、その成否がどこにあるかとか、お前もののけ姫見たのかよとかは、兎も角として、お前の言う共存が出来るような「自然」が優しかったんだ。ここの自然は、恐ろしい。ここの自然と渡り合うにはそれこそ、強くなければ生き残れない……ここはロストベルトNo.1……目と鼻の先、すぐそこに広がる獣国……

 

この後18時後半にミュルダール(無人駅)のホームに無事停車した列車に、闇市帰りか?という必死さで一同乗り込み、ようやっと一息ついた。電気の元でこそ、人間は心から息が出来るなと思いました。

それにしてもノルウェイの列車(ベルゲン急行)、一等(コンフォートクラスと言うらしいです)と二等が日本のグリーン車みたいに露骨に書いていなくて、私は前日時点でロクにチケットをチェックしていなかったので、誤って一等に乗り込み、チケットを見回りに来た車掌に「お前なァ……」みたいな呆れ顔で見られたんですけど、私がオドオドとして見るからに英語通じ無さそうな顔だったからか、「別にいいぞ、座ってろ」と言われ、罰金を免れました。レアケースだったと思う。

当時は、食堂車(最前列車、メニューを見るに寝台車利用客向けのライトミールの提供とかもしてた)終わってるし、水も買えなかったし、フロムの駅の便所の手洗い場で、自動センサーを誤魔化しながら汲んだ便所手洗い水をゴクゴクしながら、以前後輩がお土産に持って来てくれた、モンゴル土産のチョコレートを齧りつつ、暖かいものが食べたいと、なんだかいじけたような気持ちで、チェッ、なんだあの車掌、厭味な目付きで睨みやがってと、一人で荒んでたんですけど、お前、たぶん、相当温情掛けられてたぞ、と思う。

世界一物価の高い国の罰金があそこで発生してたらほんと、ヤバヤバだったので、感謝して下さい。あの節は本当にありがとうございました。あの時救って頂いた旅客で御座います。反物織れるように、ユーキャンで資格とっとこう。

 

ここまででもう三度目になると思うんですが、ベルゲンが海流の影響で雪が降らず温暖な気候であるというのは本当で、ミュルダールから更にオスロに向かって内陸に進むにつれ、車窓から積雪が見る見る内に厚くなっていくのが分かった。

時折雪深い謎の駅で降りていく人影を見るにつけエッ……ここで降りるの……?YOUは何しにGOLへ???というかGOL、ベルゲン急行内のフリーWi-Fiで調べるに「ゴル」なんですけど、どう聞いてもヨルとかオルとかそんな感じの発音で、えっ私本当に今乗ってるのベルゲン急行なの?????キサラギ駅とか、出て来たりしない??????みたいな、出所不明の妄想や不安に苛まれる等したんですけど、この謎は後の行程のデンマークにて、現地滞在中の知人によって解かれました。なんか、向こうの言葉、Gを、発音しないらしいね? 知らんけど。

 

暗夜行路ベルゲン鉄道ではNSBのフリーWi-Fiがビュンビュン飛び回っていたので、座席に根を生やした私はひたすらツイッターで呟きながらピクシブを閲覧し時折浅く眠り、走行している内にやがて来たるオスロ着が、22時も終わる頃だったんですが、幹線道路沿いのオレンジ色の光の周囲に、徐々に人の居る白い灯りが見えるようになって、最後ようやく、自然の威容が目に入らない、見るからに人工の建築物に囲まれた都市に列車が止まったとき、私は心底安堵した。ぶ、文明の光……! 

まぁすぐこの後首都オスロ24時って感じで、どこからともなく響く推定酔っ払い男性の「ア˝ーーーーッ!!」っていう絶叫から逃れつつ、粉雪(増量中)の中オスロ駅裏を、雪塗れで彷徨うことになるんですが。

 

ナットシェルを終えて

ほんと、俺の屍を越えていけ~~~~~~~~!!というか、普通の観光客はこんな脳味噌粘菌以下状態でナットシェル始めないと思うので、拝啓 過去の私へ といったところになるんですが


①メールを読め ほんと、メールをよく読んでほしい。真剣に

②調べろ フロム鉄道とか色々見どころあっから、調べろ。そのついでに高緯度だからそうじゃん日が沈むじゃんとか 思い至って せめてこの辺のウェブページは見てから行ってほしかった お前ベルゲン急行の名前も良く知らない状態で乗りやがったもんな。トーマスクック先輩がヨーロッパ景勝ルートって紹介してんだぞ。まぁ私が乗ってる時間はパーフェクト暗闇とどこまでも雪景色だったんですけど。

 

www.tumlare.co.jp

www.tumlare.co.jp

 

③(どの道日程的に不可能だったんですけど)夏場に行け(少なくとも夏場がハイシーズンと理解して心しろ) 冬の北欧!クリスマスシーズン♥ とか、それはそれで確かにまぁ楽しかったんですけど 少なくともベルゲンは夏場がハイシーズンだし、ナットシェルやフィヨルドもソレだと思うぞ。ウィンタースポーツやらねぇ人間がよ、わざわざ冬に軽井沢行って完全に満喫できるか? そういうことなんだよ。

 

おわりに

翻って、ここは自宅、私はパソコンに向かってほんと、そんなことしてる場合じゃないんですけど、これで精神安定を試みてるんじゃないかっていうような勢いで怪文書を作成していて、現在時刻は、午前一時を過ぎたぐらいなんですけど、先程蛙飛びをして鼻血を出したうちのネズミが、五時間を経てようやく立ち直ってくれたみたいで、鳴らしているのかどうかわからないサイレントホイール!という前評判の回し車を回す音がします。ガタガタガタガタ、或いは、ゴトゴトゴトゴト、牛車か? とにかく、立ち直ってくれたようで良かったです。

 

 

*1:類語:公開処刑 レジュメの準備により院生は体力的に死ぬ さらに当日の発表及びその後の詰問タイム、そして将来(修士論文)へのぼんやりとした不安により院生は精神的に死ぬ

*2:ネット予約に伴いナットシェル公式から送られてくるメールには、インターネット予約直後に送られて来る「予約確認メール」と、二日三日して諸々の手配が完了してから送られてくる「手配完了メール」があります。ナットシェル、要は自然を相手取った観光プランなので、なんか色々あって、「手配できなかったよ!別日にしろ」と言われる事例もわりと無いことではないらしく、ナットシェル公式サイトにもあるんですけど、「飛行機とか宿とか、ナットシェルに伴う諸々の予約は数日後に送られてくる「手配完了メール」を確認」してからの方が安心、というか、諸々の補償はしないので、ナットシェル次第で変動する予約はしないことが強く推奨されています。私はその辺普通に無視してました。鬼か? しかしまぁ運が良かったので、今回はこの点では火傷しなかったんですが。